固体高分子形燃料電池の開発

燃料電池は、化学エネルギーを電気エネルギーへ直接変換できる高効率なエネルギー変換デバイスです。石油資源に乏しい我が国では、燃料電池の実用化と普及が重要な課題として位置づけられています。既に家庭用あるいは携帯用の燃料電池が一部では商品化されていますが、その性能はまだ十分といえず、一般的な普及には至っていません。我々は構造制御という観点から燃料電池の性能向上に取り組んでいます。

1. 三次元規則配列多孔体を用いた高性能電解質膜の開発

三次元的に規則配列した細孔を持つ多孔質膜を作製し、その内部へプロトン伝導性高分子を充填したコンポジット電解質について検討しています。多孔質基材によって電解質の膨潤が抑制され、形態安定性に優れた膜が得られる点が特徴です。また、多孔体の構造を生かし、二種類の高分子を用いて孔内部に高分子のコアシェル構造を形成できます。このようなナノ・ミクロ構造が精密に制御された構造を形成することで、電解質膜の性能を大きく向上できます。

図1 コアシェル構造を有するコンポジット電解質膜における物質輸送モデル

2. メカノケミカルボンディング技術を用いた低白金複合触媒の開発

固体高分子形燃料電池の電極触媒には高価な白金が一般的に用いられます。燃料電池を低価格化し、一般に普及させるためには、白金使用量の低減が不可欠です。我々は大阪大学と共同でメカノケミカルボンディング技術を用いた新しい低白金触媒の開発に取り組んでいます。本技術の特徴は、従来の複合化法(熱過程や化学反応によるもの)では得られない新しい固体−固体界面(触媒機能)を形成できる点にあります。既に白金とタングステンカーバイド、あるいは酸化スズを複合化し、白金の質量活性を大きく向上することに成功しています。複合粒子の触媒能とナノ構造の関係を詳細に調べ、さらなる低白金化へ向けて触媒創製に取り組んでいます。

図2 白金/タングステンカーバイド複合触媒の電子顕微鏡観察像

3. 燃料電池用イオン液体の開発

燃料電池を中温無加湿条件で作動できれば、小型化が可能となり、その出力特性も大きく向上します。しかし、固体高分子形燃料電池に用いられる高分子電解質は水を介在してプロトンを伝導するため、100 °C以上の高い温度で使用できません。我々は熱的に安定で高いイオン伝導性を有するイオン液体に注目し、燃料電池用イオン液体の創製に取り組んでいます。これまでの検討で、白金電極上へのアニオンの吸脱着挙動がイオン液体中の酸素還元活性に大きく影響していることをin-situ FT-IR測定により明らかにしました。また、その結果を基に新しいイオン液体を設計し、酸素還元活性の向上に成功しています。

図3 dema-FSI, dema-TFSI, dema-BETI中の白金のCV